作文やスピーチの技術に入る前に、スターグローブの「言葉・対話・表現」の授業では、自分を知ることから始めています。出発点に置いている問いは、次の一文です。
人と対話する前に、まず自分と対話できているか。
この問いを扱うために、私は「私誰なの研究会」という取り組みを立ち上げました。言葉を外に向けて使う前に、自分の内側にある考え方、選択の理由、大切にしているものを確認する時間をつくるためです。
導入:自分と対話する習慣をつくる
「私誰なの研究会」では、アプリケーションも活用しながら、自分と対話する習慣をつくっています。取り組みは始まったばかりですが、目的は明確です。
曖昧なままになりやすい気持ちや違和感を、言葉として取り出すことです。
たとえば、生徒は次のような問いに向き合います。
- 自分はどのような考え方をしやすいのか
- 何を大切にして選択しているのか
- なぜその行動を選んだのか
- 生徒としての自分
- 子どもとしての自分
- 家庭や学校の中で求められる自分
- それは自分本来の特性なのか
- 役割としての振る舞いなのか
- 環境によって引き出されているものなのか
こうした問いを継続して扱うことで、自分の思考や行動のパターンが見えやすくなります。対話の前提として、まず自分の状態を観察する段階を置いています。
展開:特性と役割を分けて捉える
この授業の背景には、生徒と1年間かけて取り組んできた心理テストづくりがあります。その実践を通して、人には時代や文化を越えて共通する特性があることが見えてきました。
一方で、その特性はいつも同じ形で表れるわけではありません。人は状況によって、さまざまな役割を担います。
同じ人であっても、場面が変われば言動も変わります。そこで授業では、次の視点を扱います。
この区別を持つことで、自分の行動を一つの性格や気分だけで説明せず、状況との関係から捉えられるようになります。
深化:自己理解を言語化し、他者との対話へつなげる
自己理解は、理解しただけでは対話につながりません。授業で重視しているのは、自己理解を言語化することです。
自分の状態を相手に伝えられないと、すれ違いが起こります。たとえば、生徒と保護者の会話でも、気持ちや理由を説明できないまま言葉が短くなると、相手は状況を理解しにくくなります。その結果、内容ではなく反応だけがぶつかることがあります。
そこで授業では、次のように自分の内側を言葉にする練習を重ねます。
今、自分はこういう状態にあります。
こういう理由で、このように考えています。
このような言語化ができると、相手は理解の手がかりを持てます。誤解が減り、協力の方法を考えやすくなります。
スターグローブの授業で目指している流れは、次の3段階です。
1. 自分を知る 2. 自分を言葉にする 3. 他者と対話する
対話を単なる会話で終わらせず、互いの理解を進める営みにするためには、この順番が必要です。「私誰なの?」という問いは、自己紹介のためだけの問いではありません。自分の特性、役割、環境との関係を整理し、他者との関係をつくるための入口です。
私はこの取り組みを、日常の中で続けられる自己理解と対話の実践として育てていきます。
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Abstract
This article reports on Star Globe’s language, dialogue, and expression class, which begins with self-understanding. The practice includes the “私誰なの研究会,” where participants use an application to build a habit of dialogue with themselves. The article also describes insights from a year-long psychological test-making project with students, focusing on the distinction between personal traits, roles, and environmental influences. The class connects self-understanding to verbalization and then to dialogue with others.